想像好きです。

僕は色々なことを想像するのが好きです。
こんな話をスタッフにしていると
「そう、妄想するのは大事なことなんですよ」
いや、しているのは妄想ではなくて想像。
このトシで妄想してたら怖いやん

では、そんな想像しているのかというと・・・

息子と甲子園球場に野球観戦に行く。
この試合、前半戦の山場の試合。
負ければ事実上、今年の優勝はなくなる。
しかし、我が阪神は9回裏1-2で負けている。
そこで僕は「ちょっとトイレ行ってくるな」と席を立つ。
息子は1人にされるのが不安なのか、心細そうに席を立った僕を見上げる。
8番バッターの藤本が内野安打で出塁する。
8回までに代打を使い果たしたこともあってネクストバッターズサークルには
見慣れない男がヘルメットを被って出番を待っている。
場内がざわめく中、ウグイス嬢のコールがスタジアムに響き渡る。
「9番、江草に代わりましてバッターYOSHI」
・・・・・
球場内、一瞬の静寂の後、怒号が飛び交う。
「YOSHI?誰やねん、それ?真弓、勝負捨てたんかい!!」
野次とあきらめの雰囲気の飛び交う中、僕はゆっくりと打席に入る。
スタンドの息子の驚いた姿が眼に入る。
相手ピッチャーも年老いた僕の野球選手とはかけ離れた姿を見て驚きながらも第1球。
僕は大きく空振りをして尻餅を付く。
阪神ファンからはさらに野次が飛ぶ。
「真弓ぃ~、今からでもエエから代打出せ」
僕の素人並の1球目のスイングを見た相手ピッチャー、
ちょっとイタズラっぽく笑って投じたボールは僕の頭へ向かって一直線。
僕はもんどりうって地面にへたり込む。
それでもなぜか心は落ち着いている。
この日の為に、息子にこの姿を見せるために僕はひそかに練習を積んできたのだ。
大きく深呼吸をして再び打席に入る。
ファンの野次も相手チームの罵倒も一切耳には入らない。
ものすごく静かだ。
ピッチャーのモーションはスローモーションに感じる。
そしてその手から投じられたボールの縫い目まではっきりと見える。
僕は思いっきりスイングする。
ボールがバットに当たって一瞬、楕円形になるのまではっきりと見える。
放たれた打球はそのまま大きな弧を描いてセンターのバックスクリーンに入る。
ゆっくりとダイヤモンドを回る。
相手チームや味方ベンチ、そしてファンが何を言っているのか全然分からないけど
息子の「お父さん、お父さん」という声だけがはっきりと聞こえる。
ホームベースを踏む頃には息子は興奮して柵を乗り越えてグランド内に入ってくる。
一目散に駆け寄ってきた息子を高々と抱きかかえて場内を一周する。
(実はこのシーンは漫画の「花男」のワンシーンです)

昔、息子は小学校2年生の時に僕が打たれて負けた姿を見て大泣きしてました。
だから、再び強い姿を見せたい。
こんな想像をしているとちょっとだけ涙が出てくるのです。

明日も仕事、頑張ります。