1年の終わりにサプライズ

腰がめ~っちゃくちゃ痛い。
土曜日の早朝にグランドの整備をして一気に悪くなった。
その日の午前中は子供たちにティーバッティングをさせるため
トスを上げていたのでさらに悪化した。
あまりに痛いのでいい加減にして途中でやめたくなったが
アホ面して自分の順番を待っている子供たちを見ると
途中でやめられなくなってとうとう最後まで続けてしまった。

昼からは仕事だったのであまり痛いのは気にならなかったけど、
日曜日の試合で主審を務めているときはもう倒れそうやった。
子供の審判はかなり低い姿勢で見る。
僕はわりと身長があるほうなのだが、頭が大きくて太っているので
中腰になるのは腰にかなりの負担がかかる。
この日は前の日に腰を痛めたのが響いて、腰だけでなく
両足から真ん中の足(失礼)まで痺れて大変だった。
でも、子供たちが真剣にプレーをしている姿を見ていると
「痛い」なんて言ってられないので何とか必死で主審を務めた。

わがチームはというと、他のチームには失礼だが、
今回は近隣のチームばかりの大会だったので、
ちょっとだけ余裕の戦いをして欲しかった。
実力的には大したことはないのだけど、今年のチームは経験だけは十分。
いろんな大きな大会で重ねてきたので、余裕を持って楽しむ事を目標にすることで
その上で実力が十分に発揮できて結果が付いてくることを目標にしていた。
それで目いっぱいやって、結果的に負けることがあったとしても
目的さえ達成すればそれはそれで次につながると考えていた。

ところが・・・・
子供はやっぱりあくまでも子供。
大きな象には負けて元々となりふりかまわず向かっていけても、
同じぐらいの実力の相手になるとやはり緊張してしまうのか
金縛りにあったプレーをしてしまうのです。

1回戦、ちょっと余裕の勝利。
2回戦、ギリギリの勝ち。
で、決勝戦・・・・
相手エースが体調不良で途中降板。
僕自身は逆に緊張感がなくなってしまって、
なんとなく勝利への執着感がなくなってしまってました。
このまま、勝ったらいつもの怪物君一人の活躍での勝ちパターン。
1-0で勝っていたのが、そのまま続くかと思うと、大きな落とし穴。
なんと、エラーで2-1のビハインド。
それでも、そのうちに逆転するであろうと・・・

でも、回を重ねていくうちに子供たちにやはりいつものプレッシャーが・・・
「おい、おまえら、これで何回2位に終わったんや?」
なだめようが、すかそうが、冗談を言おうが子供たちの気色は同じ。
これでは逆転できるはずもありません。
まあ、今日は負けるのもいい薬かな?
でも、すぐにこの僕の考えが間違っていることに気付かされました。

子供たちは涙を流しそうになりながらも勝利への執念を燃やし続けていたのです。
あと2分で時間切れの負けとなるところで、あっさりとそのイニングは攻撃終了。
次のイニングに突入したのです。
ここから子供たちの執念が違いました。
まず、先頭バッター、いつもは大振りをして三振を繰り返す4番が
コンパクトなスイングで難しい低めの球をセンター前へヒット。
次の5番がフォアボールでノーアウト1,2塁。
6番バッター5年生はバント失敗の後、見逃し三振で1アウト1,2塁。
7番バッター5年生、フォアボール、これで1アウト満塁。
8番バッター5年生、粘ってフォアボールの押し出し、これで同点。
ここで9番バッターの5年生、ここまでの今年の打率は0割5分。
守備では目をつぶってエラー、バッターボックスでも消極的で、
見逃し三振を繰り返してきた子供です。
練習でもその性格からかボールに向かっていくことなく、
今日のこの大会でもここまではヒットがないばかりか見逃し三振を繰り返してきた子。
次の1番バッターは怪物君。
この9番バッターで勝利は無理でも怪物君が何とかしてくれるであろうと・・・

僕は「お前が決めてしまえ」と言いながらも、満塁のこの場面、
この子にはちょっと負担が大きすぎるのかな?と思ってました。
こーーいッ!!
いつものこの子の気合の声です。
ピッチャー第1球、会えなくバットは空を切ります。
ああ、やっぱりダメか?
こんな空気が味方ベンチを支配したでしょうか?
でも、僕はこのスイングを見て、かすかな、いや、大きな期待を抱きました。
この子は他の子と違ってプレッシャーがかかっているかどうかは分からないけど、
試合でも素振りでも同じスイングをしてくれるのです。
もしかしたら、やってくれるのかも?

ピッチャーの第2球、5年生9番の0割5分打者は思い切りスイングしました。
その瞬間、バットに思いっきり衝突したボールは鋭い打球となって
勢い良くセンター前へと弾かれ、センターの前でワンバウンド。
3塁ランナーは歓喜のホームイン。
この大会は優勝しても冷静を装うはずの僕はベンチでおもいっきり両手を突き上げました。
1塁を駆け抜けた5年生の元に子供たちが駆け寄りました。
みんな抱き合って喜んでました。

そしてビックリするような光景が目に入りました。
いつもはクールな怪物君、腕を目に当てて大泣きしてました。
うちの体の大きな小心者の6年生の息子も大泣きしてました。
その姿を見て僕も泣いてしまいました。
お母さんたちも他のコーチも泣いてました。

怪物君はチームのことが人一倍大好きです。
自分だけが頑張るんのではなく、普段、実力を発揮出来ないでいた5年生の活躍が
よほど嬉しかったらしく、しばらくの間、涙が止まることはありませんでした
怪物君一人の活躍で勝ってきたこのチームが、ようやく一つになれた瞬間でした。
子供たちは最後になって僕に思いっきり大きなサプライズを用意してくれました。
本当にありがとうな、お前らの監督やってて良かったわ。

1年間テーマにしてきたことがようやく完成しつつあります。
僕が監督でやるのも残すところ1ヶ月、
これで思い残すことなく、監督業は終了です。
来年はプレーヤーに復帰しようかとも思ったけど、土日は仕事に専念やな。