こげたお好み焼き

日曜日は母の日。
息子の野球が終わったのが7時半過ぎということもあって
普段、家族の為に頑張ってくれている嫁さんの慰労のため、
みんなで食事に出かけたのでした。

しかし、このお店、混雑している時はなかなか料理が出てこないという話。
先に電話でオーダーしておくか、それとも行ってからオーダーするか?

結局、家で待っても店で待っても同じことなので
お店に行ってからオーダーすることにした。

お店の自動ドアの前に立って店の中を窺うと、
先客はゼロでカウンターに店員のおっちゃんが1人で鼻くそをほじくっていた。

僕たちが自動ドアを開けてお店に入ると、
「いらっしゃい」
ちょっと無愛想におっちゃんが小さな声でつぶやいた。
別にそんなことは気にしない、手を洗ってさえくれれば・・・

案の定、おっちゃんは手を洗わずにコップに水を入れて差し出した。
いや、僕はビールを飲むので別に水を飲むわけではない。
子供にもウーロン茶を頼めば問題はなかろう。

調理場のおばちゃんは僕たちが入ったのを見てキャベツを切り出した。
この日は日曜日、もしかしてたくさんのお客さんが入って、
用意していた千切りキャベツがなくなったのか?
でも、ようく見ると生地まで溶きだしている。
もしかしてそれまでは余程忙しかったのであろう。

前回もお好み焼きが出てくるまでに40分以上の時間を要した。
もしかして今日も40分以上かかるのか・・・?
それでも一品料理を数点オーダーし、お好み焼きも3枚ほどオーダーした。

嫁さんと母の日を祝って生ビールで乾杯し、料理を待った。
ところが・・・
待てど暮らせどお好み焼きは出てこない。
いや、こんなことは想定の範囲。
そのために「すじポン」(茹でたすじ肉をポン酢で味付けしたもの)を頼んである。

その間に他のお客さんが入ってきた。
他のお客さんはお好み焼きとそば飯とすじポンを頼んでいた。

おばちゃん、一生懸命お好み焼きを焼いている。
そば飯を炒める香ばしい臭いもしてくる。

でも、すじポン出てこない。

そのうち香ばしい臭いがこげくさい臭いに変わってきた。
「これはアカンかな・・?」
カウンターの向こうでなにやらヒソヒソ話が聞こえる。

ははーん・・・そば飯、焦がしたな・・・?

そんなことを想像しているとすじポンが出てきた。
大根おろしが載ったおいしそうなすじポンを子供に先に勧めた。
すると・・・
「お父さん、味せーへん」
そんなことないやろう?
お前らは料理がなかなか出てこないので怒って先入観で見てるだけやろう?
と、一口味見をした。
あれ?確かに味がない。
すじ肉が入った食器の底を見てもポン酢らしき液体がない。
「おばちゃん、ポン酢かけた?」
するとおばちゃん、
「ゴメン、忘れてたぁー」とポン酢を持ってきた。
もう1組のお客さんも苦笑いしていた。
いやいや、こんなことはこの店では想定の範囲。
これぐらいでは僕は怒りません。

しかし・・・お好み焼き、まだ?

すじポンを食べ終わって10分以上も経ったろうか?
僕たちが頼んだお好み焼きが3枚運ばれてきた。

ただ、そのお好み焼きはこげくさい臭いとともにやってきた。
そう、焦げたのは他のお客さんが頼んだそば飯だけではなく
僕たちのお好み焼きも焦げていたのだった。

恐る恐るコテで裏側を見てみた。
視界に入ったお好み焼きの裏側はこげ茶色ではなくて、
レガシィのオブシティアンブラックパールだった

それでも食べ物を粗末にするのは嫌いなので一口食べてみた。

・・・・

子供たちに「残さず食べなさい」とは言えなかった。

母の日の楽しい食事の時間が台無しにされたようで
嫁さんも子供たちも僕もてすごく悲しくなった。

底が真っ黒の無残なお好み焼きを残したままお店を出ようとした。

おばちゃんは「もう今日はお金をもらえない」と僕に告げたが、
ビールを飲んだので半分だけお金を払ってお店を後にした。

普段はお好み焼きも他の料理も美味しくて実は結構好きなお店。
この日はたまたま調子が悪かったのだろう。

でも・・・・
カウンターに暇そうに座って鼻くそをほじくっているおっちゃん、
段取りが悪くて料理を供するのにかかる時間、
そして「アカンかな?」と感じながらも供されたこげたお好み焼き。

今日も店主は
「はぁー、ひまやな・・・・」
なんてつぶやきながら、悩んでいるに違いない。

なんかね、小売店の縮図を見ているような気がした。
お客さんの目線で見たら原因は明らかなはずなのに、
売っている方はその原因を認識しながらも改善できないでいる姿。

お客様に喜んでもらってこそ対価を得られるということに関しては
どんな商売でも基本は同じ。
これまでもお客さんの目線で見ることを重要視してきたけど
それでもまだまだ同じ温度を持って対応させていただけていないと思う。

ましてや僕たちが提供する商品は自動車。
おいそれと簡単に何度も購入していただける商品ではない。

それだけの熱意と確実性と迅速さと慎重さが必要だと思う。
(これでもまだ足りないと思う)

みんな、明日からはもっと頑張ろう。