デビのこと。

ハッと気がつくと携帯電話が見当たらない。
会社の子機から携帯の番号にコールして探しまくるも呼び出し音は聞こえない。
どこへ行ったんやろう?
トシのせいか、なかなか思い出せない。
あ。。。
もしかしたら・・・・
1人のお客様に連絡を取ってみる。
すると、案の定、その御客様の車の中に乗っていた模様。
僕の携帯はお客様とともに兵庫県龍野市まで行っていたのでした。
明日の昼には帰ってくる予定です。
今日、明日は携帯で連絡が取れません。
申し訳ありません

TAX泉北のお客様には関係のない事かも知れんけど、
このことは触れておかないとあかん事なので書きます。

いつものように長く書いてしまったら収拾がつかなくなるのでなるべく短めに・・

実はデビが先日、帰ってしまったのです。

デビは3月の末、日本にソフトボールをするためにやってきました。
「平日の昼間にはTAX泉北でカーウォッシュをさせたい」
との相談がチームからありました。

たくさんのお金を掛けてソフトボールをすることに対しては
このスポーツの将来性も考えると個人的には??のスタンスだったので
外国からピッチャー呼ぶことも、
そのピッチャーに対して個人が負担して報酬を支払うことも、
自分自身はあまり積極的ではありませんでした。

しかし、彼と初めて食事をしたときに
「車が好きだ」と言うのを聞いて、また、彼のあどけない笑顔を見て
もし、昼間にすることがなくて寂しい思いをするのなら
「TAX泉北でカーウォッシュをやってみるかい?」と声を掛けました。

彼は月曜日と金曜日の週2回、TAX泉北でカーウォッシュをすることになりました。
初日。。。
同僚のカーティスと一緒に彼はやってきました。
でも、どう見ても様子がおかしい。
通訳のカーティスに聞くと彼はホームシックにかかっているようでした。
大きな体をゆすって泣いている姿を見て、
カナダに行った時の娘のことを思い出して僕まで泣けて来ました。

カーウォッシュは翌日に延期したけど
その日から週に2回、デビがTAX泉北にやってくるようになりました。

S鍋とすぐに仲良くなりました。
腰パンと言うか、たんにズボンがずり下がっていると言うのか、
いつもデカパンを半分以上見せながら、「HOT、HOT」を繰り返していました。
機嫌のいいときはラップをうたいながら車を掃除していました。

午前中3時間だけの仕事だったけど1時間ぐらい休憩していました。
1回来るとコーラを2リットル飲みました。
子供のお客様用においてあったジュース類はすべて飲みつくしました。
ワックスを掛けさせると車の継ぎ目の部分にイヤと言うほどワックスが詰まりました。
S鍋が「マットはもっと綺麗に洗わなければならない」というと
「ニュージーランドではそんな細かいことは気にしない」と笑ってました。

自分のfacebookを僕に見せて
「YOSHIHARA、これが僕のガールフレンドだ。世界一なんだ」
「YOSHIHARA、これが僕の車なんだ。250km/h出るんだぜ」
「YOSHIHARA、これが僕の試合の時のビデオだ。この時は痩せているだろう?」
「YOSHIHARA、これが僕のコーチさ、世界一のプレーヤーなんだ、
来年、日本でプレーしたいといっているので、グローバルに呼ぼうと思っているんだ」
「見て見て、お父さん」と自慢したがる小さな子供のようでした。

「日本で一番惜しい食べ物はKARAAGEさ、セブンイレブンのが一番」
「フライドライスは絶品、どこに売っている?」
僕は突然大きな子供が出来たような気になってました。

そんな彼のソフトボールでのデビュー戦は・・・
イリーガルピッチを取られまくってピッチングになりませんでした。
日本と世界のソフトボールのルールの違いに彼は打ちのめされました。
試合後は何を話しかけても返事が返ってきませんでした。

でも、気を取り直してフォームの修正に取り組もうとしていた矢先、
彼にショッキングな事件が起きたようでした。
勤務の時はいつも眠そうな目をしていました。
「どうした?」と聞くと
「眠れない」と言っていました。

考えてみたら、まだ18歳、すごくナイーブな少年でした。
僕の娘に近い年齢の少年がたった一人で日本にやってきたのだから
「少なくとも日本にいる間は楽しく過ごしてもらいたい、
いい思い出をいっぱい作ってもらいたい」
そんな思いで彼に接したのだけれど、彼はどんどん落ち込んでいきました。

ある日、彼は出勤日でもないのにお店にやってきて、ウォンウォン泣いていました。
その晩、彼を元気付けようとバッティングセンターに連れて行きました。
バッティングセンターではすごく元気に練習してました。
帰りに食事に行ったんだけどその日はあまり食べませんでした。
その時に「帰りたい」を繰り返してました。
「僕が帰ったとしてグローバルのメンバーや他の人に失礼ではないかい?」
そのことをすごく気にしていました。

デビはどんどん元気をなくしていきました。
出勤してきた時はいつも目が真っ赤でした。
食べる量もだんだん減ってきました。

見るに見かねてS鍋がデビがかねてから行きたがっていたUSJに連れて行きました。
USJではちょっと元気を取り戻したように見えました。
メロンソーダのラージを5杯も飲んだようでした。
S鍋に「ありがとう、ありがとう」を繰り返していました。

それでも他の事件も重なったこともあってだんだんとデビは元気をなくしていきました。
今週の月曜日、デビがお店にやってきて
「仕事は火曜日に変えてもらってもいいかい」と聞いてきました。
目は真っ赤でした。
「何があったんだ?」
と聞いても
「Nothing」
かれはそう答えたきりでした。

翌日の火曜日、彼はお店に姿を現しませんでした。

心配になってカーティスに電話をすると
デビは家でふさぎ込んでいる様子でした。
これ以上日本にいることは彼にとって不幸であるとの判断をみんなでしました。
デビは翌日に急遽、ニュージーランドに帰る事になりました。

その晩、デビとカーティスとマーチンとグローバルの数人と世話人のY末とでメシを食いました。

食事会は盛り上がりませんでした。
(ファミレスというのもあったけど・・・)

だから、「最後やから1時間だけカラオケに行こう」と、言いました。

ちょっと長くなってきたので続く。