焼き飯①

今日はちょっと車に関係のない話を・・・

私は昔っから焼き飯が大好きだ。
それも母親の作った焼き飯ではなく(お母ちゃん、ゴメン)
中華料理屋のあの独特の香ばしさのある焼き飯が大好きだ。

小学校の頃から弟妹にご飯を作って食べさせていた私は
得意かどうかは別にして焼き飯をしょっちゅう作っていた。

その頃から中華料理屋の焼き飯を目指していた私は
あの独特な味を追求するためにありとあらゆる工夫をした。

現代のようにネットで情報を仕入れられないあの時代。
私はあの味を出すために本当に苦労した。

誰もが裕福でなかったあの時代・・・
焼き飯の具はかまぼこ、玉葱、卵etc・・・
ハムや豚肉が入るとそれはもうご馳走だった。

ある時はラーメンのスープの素を入れて作ってみた。
するとそれはラーメンのスープ味の炒めご飯だった。

母親の作る焼き飯は色んな具が入ってそれはそれで美味しいのだが
食べ盛りの兄弟3人分焼き飯を一気に作るとあって
ご飯がべちゃべちゃの私が理想とする焼き飯とは別の料理だった。
(それはそれで美味しかったのだが・・・)

高校の頃、王将に良く行った。
そこの王将では大き目の茶羽ゴキブリ入りの焼き飯が出されたこともあった。
あの頃の王将の調理人はパンチパーマが定番。
おそるおそるゴキブリ入り焼き飯にクレームを出しても、
「ああ」
と言って新たに出された焼き飯を大人しく食べた。
もちろん、代金はきちんと支払うしかなかった。

でも、そこである二つの事実を見た。
強火のコンロで一気に作り上げるのはどの中華料理屋でも定番。
作り置き?(その頃の王将では一人前に余った焼き飯は
調理代の下のざるに入れて次の人のオーダーに使っていた)
それは王将ならではの定番。
美味ければそれぐらい何の文句もない。
(ゴキブリ入りはゴメンだが・・・)

一つの事実はラードと書いてある油を使っていること。
なるほどラードを入れることで香ばしさが増すのか・・・

もう一つの事実は卵を先に入れること。
そうか、それで卵が油を吸い込みご飯がバラけるのか・・・?

早速家で試してみた。
おお!!
結構、理想に近い味になった。
でも、近い味になったとは言え、なんとなくその物の味ではない。
家庭の火力では無理なのか・・・・

王将では美味い。
家で作るとイマイチ・・・・

そんな時代が数年続き、私は大学生になる。
その時代は京都でバイトをしていた。
バイト先は今は亡き、金閣寺近くの喫茶店。
キッチンはそれはもう私の理想の職場だった。
ファミレス、パスタ、家庭教師以外に調理のバイトばかりしていた私は
職業として焼き飯を作ることはなかったのだが
このお店で初めて職業としての焼き飯を作ることになる。

エクワイン、カフェチックなおしゃれな店であるが、
そこは学生街のお店で定食類を始め、食事メニューも充実している。

バイトに入って初日、チーフがメニューのマニュアルを説明してくれるも
私はその説明を半分ぐらいしか聞いていなかった。
それよりもチーフがフライパンの底を焦がしながら作る
べちゃべちゃの焼き飯を見て、もう、ワクワクして仕方がなかった。

1ヶ月もするとそのバイト先にも慣れてきて
調理場は完全に私の独壇場になった。

ある時、バイト先の倉庫の奥に大きな中華なべがあるのを見つけた。
私はその中華なべを出してきて丁寧に洗い、
半日かけて念入りに中華なべをくず野菜を使って焼いた。
中華なべは見事に使い込まれた職人の鍋になった。

実はその店のメニューは焼き飯ではなくピラフだった。
ピラフと言うのは西洋で言うスープを使った炊き込みご飯。
しかし、実際にはそんなおしゃれな料理など存在するはずもなく
その時代はどの喫茶店に行ってもピラフと言う焼き飯を供していた。

まずは勝手にラードを買って来て、
スタッフの賄い様に私なりの焼き飯を作ってみた。
鍛えた中華なべで作る焼き飯はご飯の一粒をも焦がすはずもなく
パラパラに、しかもしっとりと仕上がった。

スタッフの評判は上々だった。
自分で食べてみても確かに美味かった。

でも、何かが違う。
あの中華料理屋の独特な味とは違うのだ。

それでもスタッフの評判が上々と言うこともあって、
私が入っている時は全てその中華なべでピラフならぬ焼き飯を作った。
焼き飯は評判メニューになった。

ホールのスタッフはオーダーを通す時、
ソーハン、イー
(王将では「チャーハン一つ」をこういいます)
と言った。

でも、今から考えると私がこのバイト先に入るのは週に3日ほど・・・
しかも4,5時間のものなので、私が調理場にいないときは
ピラフというメニューは別の料理を出していたのかもしれない。

それでも、4年生で卒業するまでその焼き飯を私は作り続けた。
延べで何食作ったのであろう?
結構はやっていたお店だったので、
おそらくかなりの数を作ったには違いないのだが、
それでも自分の作る焼き飯よりは
近くの王将の焼き飯の方がはるかに美味いと感じていた。

そんな私も卒業を迎えることになる。
そしてふわふわと決めた就職先で東京の勤務が決まり、
私は究極の焼き飯にめぐり合うことになる。

長くなってきたので明日へ続きます・・・・