ほんとうに苦手?①

「得意」「苦手」
いつからこんな風に決まっていくんだろう?
例えば運動の苦手な人はいつから運動が苦手になるんだろう?
小さい時は遅くても早くてもみんなちょこまかと走ったり動いていたりしたはず。

計算の得意な人。
小さい時は計算どころか、字を書くことすら出来ないワケで
そんな人がいつから計算が得意になったのであろう?

人間は失敗するとそのことにチャレンジするのが億劫になり、
億劫になると、その分野の経験をしないので苦手になっていく。

対して、ある事で褒められたり、評価されるとその分野で自信がつき、
自信がつくと、どんどんチャレンジするのでますます得意になっていく。

「走るのが速い」と褒められると自信がつくからどんどん走る。
どんどん走るとますます速くなる。

逆上がりが出来ないと、恥ずかしい思いをして2度と逆上がりしたくなくなるので、
鉄棒すること自体が苦手になってしまう。
やがて、器械運動を始めとする体育そのものがイヤになってしまう。

そういう風に考えたら得意不得意なんて子供の頃の経験則に基づいているような気がする。
子供の頃に算数が苦手だったら、大人になっても計算が苦手と思い込んでいる。
算数だけではなくて勉強すら嫌いになっていくかもしれない。

運動だって同じこと。
体育関係で評価されたことがなかったら運動自体が苦手だと思い込む。
大人になるとますます運動する機会から遠ざかるので体を動かすのすら億劫になる。

もしかしたら思い込みに支配されて、本当に苦手になっていくのかもしれない。

ここで一つ、ある男の例を上げる。
この男、子供の頃から逆上がりが出来ない。
中学校に上がってからというもの、高校、大学、社会人と逆上がりする機会がないので
実は生まれてから40数年間というもの逆上がりをしたことがない。

小学校の頃は超肥満児。
冬場でも汗をかいていたので、あせもや湿疹ができ、クラスメートからはからかわれていた。

中学校に入ると走ったりする運動はイヤなので剣道部に入った。
でも、人数の多い中学校だったので体育館の使えない日はひたすら走らされた。
剣道はそんなに強くなれなかったが、走るのも力もなんとなく人並みになってきた。
でも、相変わらず、器械運動は苦手だった。

高校の受験に落ちて併願で受けていた私立高校に入った。
ここでは進学校だったのでクラブには入らなかった。
かと言って、勉強もそれほど得意ではなかったので段々と学校からは遠ざかっていった。
でも、高校で一つだけ楽しみにしている教科があった。
それは何を隠そう、体育の授業だった。
この時点でも体育が得意なわけではなかった。
ただ、担当の先生がオリンピックの体操選手を何人も輩出している先生で
マット運動などは、まずマットに寝っ転がることから教えてくれた。

週に3回ほどの体育の授業が楽しみで仕方がなかった。
その日だけは途中でフケずに、なんとか学校に行った。
でも、来る日も来る日も授業はマットの上を転がるだけだった。

ある日、クッションのあるマットが設置されて、
逆立ちの姿勢からそのまま後ろ側に倒れるという運動をやった。
背中全体に感じる衝撃が生まれて初めての事で実に気持ちが良かった。

もうこうなるとマット運動が楽しみで仕方がなくなった。
そして運動は段々と進化して行った。
背中から落ちていたのが、足の裏から落ちるようになった。

次は助走をつけてやってみた。
小学校の頃から体育が不得意だと思ってきたこの男。
1回目の助走でなんと見事に着地成功。
いわゆる地転の成功である。

後ろまわりすらやった事のなかった男がいきなり地転である。
ものすごく快感を感じたことは間違いない。
ますます体育が楽しみになった。
もっと何でも教えてもらいたいと思った。

2年になると今度は体育の担任が変わり、バレーボール専門の先生になった。
この先生も、元オリンピックの強化選手であるが、
授業はまったくといっていいほど熱心ではなかった。
熱心でないだけならまだしも、授業そのものに出てこないので
バレーボールの授業は体育委員であるこの男がやっていた。

バレーボールなんか今まで遊びでしかやったことがない。
でも、目前に迫ったクラスマッチに負けるのがイヤなので
とりあえず自分でバレーボールを勉強して取り組んでみた。
ところが、さすがは球技、一朝一夕には上手くなるはずもない。
週に3回ほどの授業では簡単に上手くなるはずもなかった。

ただ、、その頃からなんとなく運動には自信がついてきた。
自信がつくとなんとなく積極的に取り組むようになった。

反して、逆に勉強がとても苦手になってきた。
勉強が苦手になると授業に出るのはますます億劫になって行った。

国語だけはなぜか得意だった。
子供の頃から国語だけは褒められていたので、
勝手に自分で得意だと思い込んでいたのだった。

長くなってきたので続く・・・・