大事件で2017年度スタート③

前の病院の入院から数えて3日目、もう退院のスケジュールが出たのでがぜん元気になる。
おまけにこの日からは水分も取れるし、メシも出る。
不思議とのどは渇かんし、腹も減らんねんけどね。

ちょっと余裕が出てきたのでいろんなことに気が付く。
病院自体が新しい成果、ずいぶんと病室も綺麗。
室温はちょと暑いけど気にならない程度。

同室の患者さん、年齢も顔もわかんないけど、携帯電話で文句ばっかり言っている。
自分が世界で一番不幸な人間なんかと思ってるんやろうか?
恐らく仕事の事なんやろうけど、俺も同じとちゃうやろうか?

音しか聞こえへんけどみんな飯を美味しそうに食う。
そらそうやな、それしか楽しみないもんな。

でも、僕はメシもまだ食えんし、動くこともできない。
お腹も背中も腰も痛い。
早くも退屈してきた。

昼前に水分摂取の許可が出る。
なんと36時間ぶりの水分摂取。
渇いたのどにジュワー、「麦茶がこんなにうまいものか?」とは全然思わなかった。

そのあとに尿道のチューブを抜く。
これは助かる。
なんせメチャクチャ痛かったから。
余計なことやけど朝は特に痛かったし。

紙パンツ一丁になる。
看護師さん、無表情でチューブを引っ張る。

うわっいだぁーっ、いだだだ。

「これ抜かないと帰れませんよ。」

我慢します、我慢しますってば。

20代後半と見える看護師さん、無表情に
「着替えてくださいね。」

仕方がないので紙パンツ脱いで普通のパンツに履き替えた。
なんか段々と平気になってきた。
さすがに体は自分で拭いたけどね。

じゃあオシッコして来てください。

いっだぁーっ、いだだだ。

これはもう、痛くて出来るもんやない。
こうなると不思議なもんでオシッコしたくなくなる。

暫くして看護師さんが来る。

「ガス出ました?」

出てないっす

「オシッコ出ました?」

出てないっす

「オシッコ出ないとね、またチューブですよ、退院伸びますよ」

うわー、出します出します。

そのあと、トイレに何度か行くけど痛くて出ない。

姿を見かけるたび看護師さんは

「出たぁ?」

と、ナースステーションから大きな声で呼びかける。

ちょっと恥ずかしい。

帰りたいので「ちょっと出た」と指でポーズを作る。

「よかったぁ」

もうエエっちゅうねん。

ガスもおしっこも便も出てないので腹も減らん。
でも、予定通りこの日の夜からは食事が出た。

しばらく眺める。

54時間ぶりのメシ。
いきなりこんなメニュー、エエんやろうか?
完全に常食やん。
それでも出されたから食う。

久しぶりのメシ、こんなにうまかったっけ?とも思わん。
残すのんは嫌いなんで全部食ったけど、多分食わんかっても平気。

まだまだ食わんでも平気なんやろうと思う。