チュウケン・・・

昨日は電話機の子機を枕元に置いて寝た。
獣医さんに「何かあったら連絡します」という言葉をかけていただいていたので
電話が鳴ったらすぐに出かけられるようにしていた。
だから昨日は一滴も飲まなかった。

今日は2週間ぶりのお休みだった。
でも、チュウケンのことが気になって7時ごろに目が覚めた。
獣医さんはお休みだったが、面会の許可を得ていたので、8時過ぎに電話をした。
電話がコールするたびに心臓が口からこみ上げて来るようだった。

先生が電話に出てくれた。
聞けば、昨日の極めて危険な状態はひとまず脱して、今は通常の危険な状態。
夜中の12時ごろには一旦、首をもたげるなど回復の兆しを見せていたのだが、
2時間もたつとグッタリする状態を繰り返しているらしい。
ただ、昨夕のいつ死んでもおかしくない極、危険な状態は脱して
水を飲んだり首をもたげたりしているらしい。
その言葉にとりあえず、ホッとする。
獣医さんの許可を得て休診日にもかかわらず5時に面会する許可を戴いた。

虚脱感で何もしたくないのだが、5時まですることもないので
久しぶりにソフトボールの試合に行った。
時間に遅れたこともあって1試合目はベンチで控えていた。
あんまり元気が出なかった。
2試合目は先発した。
2ヶ月ぶりのマウンドということもあって先頭打者をフォアボールで出した。
その後ワイルドピッチ、パスボールなどでノーアウト三塁まで行ったが
後続を三者三振に取り、なんとかこのイニングは無失点。
2,3回もノーヒットピッチングだったが、
久しぶりで調子が良くないのと、チュウケンのことが気になって気乗りしなかったので
自分から交代を申し出た。
交代したとたん、2点取られて試合は2-1で逆転されたけど
その後の攻撃で再び逆転して試合は勝利した。

もし、何かあったら・・・・・
試合中、何度も携帯電話を見た。
着信歴は会社からだったのでホッとした。

試合が終わると急いで家に帰った。
5時までの時間が待ち遠しかった。

4時半になって家族全員でチュウケンの面会に出かけた。

獣医さんの病室の扉がちょっと開いていた。
その隙間からチュウケンの姿がちょっとだけ見えた。
その姿は昨晩のグッタリとした舌を出した姿ではなくて
元気はないけど、首をもたげた生命の危険を脱した犬の姿だった。

ちょっとホッとした。
家族全員がそれぞれチュウケンに触れた。
アナフィラキシーショックに陥っていつ死んでもおかしくない状態になったチュウケンは
記憶喪失になったのか、家族のことが認識できないようだった。

獣医さんに話を聞いた。
今はひとまず落ち着いているが、昨晩は2時間おきに危険な状態に陥っていたので
まだまだ予断を許せるような状況ではないこと、
嘔吐と下血が治まってきたので昨晩よりは幾分マシになっていること、
昨日の状態は本当は死んでいてもおかしくなかったこと、
ただ、現在はとりあえず生命を維持するのが先決なので
原因に即した治療が出来ていないこと。
もし、このまま少し元気になれば、明日から原因を探って
それに即した治療をしていくこと。
現在では原因は確定できないのだが、
外的要因が見当たらなくてこの状態になったのであれば、
もしかしたらそれは先天的な物であって、
今回は治癒したとしても、いつまたこの状態に陥るか分からないこと。

しかし、この先生はいつ休んでいるのだろうか?
昨日の早朝、昨晩、そして本日の夕方。
この獣医さんはこの職場と自宅を共にしていない。
きっと、怪我をした、また、病魔に冒されているペットのためにこの病院に詰めているのだ。
本当に頭が下がる思いです。

チュウケンは嫁が水を口元に持っていくと少しだけ水を飲んだ。
取りあえずはチュウケンの状態に家族一同、安堵はしたものの
重篤な状態であることに代わりはない。

20分が過ぎたので、病室を出ようとしたその時、
チュウケンがよろよろと立ち上がり
「僕も帰るわ」という感じでゲージから出てきた。
立ち上がれるまで回復したのだった。
連れて帰りたい衝動を抑えて、再びチュウケンを先生に託し病院を後にした。

実のことを言うと、昨日は絶望の気持ちが頭の中を覆い尽くしていた。
それぐらいの状態だったし、先生からも覚悟が必要なことを示唆されていた。
だが、今日の状態を見て、まだ予断は許されないがとりあえずホッとした。
帰ってきて、昨日は飲まなかったビールを呑んだ。
でも、嫁は大好きなビールを断っている。
いつ、病院から呼び出されても運転していけるようにビールを断っている。
チュウケンが早く元気になって、嫁のビール断ちが長期間にならないことを願う。