チュウケン

今朝、「お父さん、起きて」という娘の声で目が覚めた。
「ん?今何時?まだ5時半やん」
娘「エエから、ちょっと来て」
その声に促されて階段を下りていく。

するとそこには大量の血と動かなくなったチュウケン。
「え?どうしたん?」
嫁が半分泣きそうな顔で血の掃除をしている。
昨日は雨模様でチュウケンは家の中に入っていた。
夜中に嘔吐し、朝になって下血が止まらなくなった模様。
もしかしてフィラリアが発症したのだろうか?

このブログを最近になって読まれた方に少し説明を。
昨年の3月、実家の犬=ゴンが脱走していなくなった。
いつもならすぐに帰ってくるのだが、その時は3日経っても帰ってこなかった。
警察や保健所に届け出た。
何日か経ったある日、泉佐野警察から良く似た犬が保護されているとの情報を受けた。
警察で見たその犬はゴンとは少し異なっていた。
その後、1週間経ってもゴンは帰ってこなかった。
警察で見たゴンに似た犬、どうにも気になって、
飼い主が出てこなかったら引き取ることを申し出た。
実家では親が年なので若い犬は飼えなかった事と
ゴンが帰ってきた時にこの新しい犬の居場所がなくなるので僕の家で飼うことにした。

チュウケンは家族の一員になった。
健康診断に連れて行ったところ、
チュウケンはミクロフィラリアの保菌者だと言うことが分かった。
不治の病ではないことを信じて、また、病気が発症しないことを祈って
チュウケンと我が家族の生活は1年半を迎えた。

元気なときのチュウケン

話を戻します。
ネットで救急の獣医さんを探すもこの時間に営業しているところは見つからない。
チュウケンの症状はますます悪くなっていく感じ。
タウンページで片っ端から電話する。
しかし、電話に出てくれる獣医さんがあるはずもなく、気持ちは焦る。
それでもどこかの獣医さんが出てくれるのを信じて、ひたすら電話する。

何件電話をしただろう?
営業時間の9時をまわってから、かかりつけの獣医さんに行くべきか?
あきらめてかけていたその時、やっとのことで、ある獣医さんが電話に出てくれた。
落ち着いて症状を話す。
すると、「準備しておくので7時半になったら来てください。」

まさに地獄に仏の心境だった。
チュウケンをバスタオルにくるんで車に乗せた。
苦しそうにあえぐその息遣い、でも、何もしてあげられないもどかしさで
たまらない気持ちになった。

その獣医さんまでは、普段なら10分ぐらいの道のり。
でも、朝のラッシュと焦る気持ちで物凄く長い道のりに感じた。

車が獣医さんの前に着くと、ちょうどシャッターを開けてくれるところだった。
下血が止まらないのと横たわって動かないチュウケンを見て獣医さんは、
その状態が尋常でないことを僕に伝えた。

大量の出血でショック状態に陥り、細くなった血管を広げるための注射を打った。
あと、点滴が始まってステロイドやグルコースが投与された。
10分もするとそれまで横たわって動かなかったチュウケンは首をもたげ、
苦しそうだけど、僕の顔をじっと見た。

なんとなく、ホッとしたけど、まだまだ予断を許さない状態であることは
獣医さんの厳しい表情からも伺えた。
やがて子供を出かけさせる支度を終えた嫁が来たので
僕は交代して仕事に出かけた。

12時を過ぎて嫁から電話がかかってきた。
まだ、予断を許さない状況なので、そのまま入院させたとのこと。

いつものように仕事をこなしていくのが辛かった。
元気になっているかな?という希望的観測を持って、夜にもう一度病院を訪ねた。
でも、病室の扉を開けたとたん、その希望はもろくも崩れ去った。
チュウケンは横たわっていた。
朝の状態よりも悪い状態だった。
おなかを見ると息をしているのが伺えたが、
僕達が入ってきた気配にもほとんど気付くことがなかった。

息子が呼びかけるとチュウケンはうっすらと目を開けた。
僕達に気付いている様子を何とか伝えようとしていた。
僕と嫁はその様子を見て涙が出てきた。
それは僕も嫁もチュウケンのその状態を見て、
希望より、絶望の気持ちに覆い尽くされたからだった。

先生から検査の結果を伝えられた。
「見たことのない数値です。フィラリアの発症ではありませんが、
少々の毒を飲んでもこんな血液の状態にはならない。
これはよほどの劇薬を飲むか、交通事故にでも遭って、
大きなショックを受けた状態の血液の状態です。
かなり悪い結果ですが、ただ、精一杯のことはします」
原因がつかみ切れないので対処のし様がなく、
ただ、生命を維持させているだけの状態だった。

20分ほど病室にいて、先生にチュウケンのことを託し、仕事に戻った。
昨日の夜までは普通に元気なチュウケンだったのに。
何でこんなことになったんだろう?
昨日は家の中にいたので原因がまったく分からない。

今晩一晩、何とか持ち越せば元気になるような気がする。
何とか元気な状態に戻って欲しい。
チュウケン、何とか頑張ってくれ。
頼むからもうちょっと一緒に時間を過ごさせてくれ。